クローン病とガス:なぜ炎症がおならを増やすのか
クローン病は消化を予測しづらく、ガスの多い営みに変えてしまうことがあります。慢性的な腸の炎症が、なぜこれほど頻繁に膨満感・腹痛・過剰なおならを引き起こすのか、その科学を解説します。
なぜクローン病でガスが増えるのか
クローン病は炎症性腸疾患(IBD)の一種で、免疫システムが誤って消化管の粘膜を攻撃します。最も多く侵されるのは小腸の末端と大腸です。この炎症は、通常は栄養素と水分が吸収される表面を傷つけます。炭水化物などの食品成分が十分に吸収されないと、それらは大腸へと進み、そこにいる数兆個の細菌が発酵させて水素・二酸化炭素・メタンを放出します。この余分な発酵が、多くの患者が訴える膨満感やおならの大きな原因です。炎症は食べ物が腸を通過する速さも変えます。通過が遅くても速すぎても、ガスを生む微生物に未消化の材料が多く残り、放屁・腹部の張り・不快感が強まります。こうして炎症は日々の消化を不安定にします。
炎症と乱れた腸内細菌叢
健康な腸には、多様でバランスの取れた微生物の集団がすみついています。クローン病ではこのバランスが崩れ、科学者はこれをディスバイオシス(腸内細菌叢の乱れ)と呼びます。研究では一貫して、微生物の多様性の低下、Faecalibacterium prausnitzii のような有益な酪酸産生菌の減少、そして炎症環境で増える菌種の過剰増殖が示されています。この変化した集団は炭水化物をより激しく発酵させる傾向があり、悪臭を放つ硫黄化合物を含む大量のガスを生み出すことがあります。抗生物質、たびたびの入院、クローン病に多い食事の変化も腸内細菌叢をさらに作り替えます。結果として悪循環が生まれます。炎症がディスバイオシスを促し、ディスバイオシスが今度は炎症とガスの産生を維持するのです。
食事・狭窄・閉じ込められたガス
食べ物の選び方はクローン病のガスに強く影響します。FODMAPと呼ばれる発酵性の炭水化物は、小麦・玉ねぎ・豆類・乳製品・一部の果物に含まれ、腸内細菌に容易に発酵されて膨満感やおならを悪化させます。多くの患者は、炎症を起こした小腸が乳糖を分解する酵素を失うことで乳糖不耐症にもなります。クローン病で特に注意すべきは狭窄です。これは慢性的な炎症と瘢痕によって腸の一部が細くなった状態です。ガスや消化物が狭窄の手前にたまり、痛みを伴う張り・大きなゴロゴロ音・詰まった感覚を引き起こします。再燃期には、狭くなった部分に届く量を減らすため、医師が一時的に低残渣・低繊維の食事を勧めることがあります。
ガスへの対処法と、注意すべきサイン
クローン病でガスに対処するには、まず根底にある炎症を治療するのが普通です。腸が落ち着けば膨満感やおならも軽くなることが多いからです。薬に加えて、食事と症状の日記をつけると自分の引き金がわかり、少量ずつゆっくり食べると飲み込む空気が減ります。管理栄養士の指導による低FODMAP食や乳糖摂取の調整が役立つ人もいます。軽い運動はガスを腸内で動かすのを助けます。ただしクローン病のガスは常に無害とは限りません。突然の激しい膨満に嘔吐を伴い、ガスや便がまったく出ず、強い腹痛がある場合は腸閉塞のサインかもしれません。これは特に狭窄のある人にとって医療上の緊急事態です。明らかな変化に気づいたら、すぐに主治医に相談してください。
知っていましたか?
- クローン病は口から肛門まで消化管のどこにでも起こりえますが、最も多く侵すのは小腸の末端です。
- クローン病でしばしば減少する腸内細菌 Faecalibacterium prausnitzii は抗炎症物質を作り、治療法の候補として研究されています。
- 炎症が小腸を傷つけるため、クローン病の多くの人は乳糖不耐症になり、乳製品の後にガスが増えます。
- 狭窄と呼ばれる腸の細くなった部分はガスを閉じ込めます。だからクローン病での突然の激しい膨満は、閉塞の警告サインであることがあります。
豆知識
医師はガスの量やパターンを臨床の手がかりに使うことがあります。腹部の手術のあと、最初のおならは腸が『目覚めて』再び動き出した合図として喜ばれるのです。
出典
- Torres J. et al., Crohn's disease, The Lancet, 2017
- Ni J. et al., Gut microbiota and IBD: causation or correlation?, Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology, 2017
- Lewis J.D. & Abreu M.T., Diet as a Trigger or Therapy for Inflammatory Bowel Diseases, Gastroenterology, 2017